かかりつけ医の役割:良い獣医師は自分の限界を知っています

良い獣医師は、「自分が何を知らないのか」を知っています。
また、「自分が何ができないのか」を知っています。

大切なのは、自分が治すことではなく、患者が治ることです。

たとえ自分が治せなくても、患者とそのご家族のために貢献できることがあります。

自分の限界を超えている場合には、適切な動物病院・獣医師に相談・紹介すること。
これが、かかりつけ医(ホームドクター)の重要な役割の1つです。

自分ではなく、飼い主の方や患者にとって何が大事なのか。
その視点に立つことが、信頼される獣医師への一歩になります。

臨床獣医師になる卒業生へ贈る言葉

大学の獣医学の課程を卒業し、多くの獣医学知識・技能を身に付けたことと思います。
動物の病気だけを扱うのであれば獣医学で十分ですが、そこに患者や飼い主の方を思いやる心が加わると獣医療が必要になってきます。

獣医学的に正しいことであったとしても、獣医療の観点からすると必ずしも正解とは限りません。
正解は、患者の年齢・状態、飼い主の方の生命観・倫理観・経済力など、様々な要因によって変わってきます。

獣医学を学ぶための最高の教材は人によって様々でしょうが、獣医療を学ぶための最高の教材は患者と飼い主の方だと思います。
これから出会うすべての患者や飼い主の方から多くを学んでください。

学生時代の勉強不足・知識不足は自分の問題だけで済んだかもしれませんが、臨床獣医師が無知であることは患者や飼い主の方の不利益につながります。
言い方が適切ではないかもしれませんが、獣医師は無知であることが罪になる職業だと思います。

これからは臨床獣医師として、確かな獣医学的知識・技術の積み重ねに、思いやりの心を加えて、動物と人に優しい獣医療を実践していくことを期待しています。